防音研究

反響を防ぐ防音

 吸音は、クッション性のある素材などを使って、反射する音を和らげるだけではなく、その形状で音の反射を減らすこともできます。学校の音楽室や放送室、コンサートホールや映画館など、様々な場所で見かける有孔ボード。これは吸音を目的にしたものです。有孔ボードは規則正しくたくさんの穴があけられています。この穴に、有孔ボードで囲まれた空間の中で発生した音が吸収されて音の反響を減らすことができます。つまり、エコー対策のためのものなのです。

 壁や天井などで区切られた空間にいる場合、音が反響しやすいかどうかも大事。音が反響しやすいことが、良いことが悪いことか、は一概には言えませんが、全く反響のない部屋も、反響しすぎる空間も、居心地良くは暮らせないでしょう。反響しやすい部屋というのは、浴室やトイレなど、狭くて硬い壁に囲まれた部屋です。トンネルなど、コンクリートなどで囲まれた空間でも反響が大きいですよね。最近、高気密・高断熱住宅が増えていますが、反響についても考慮しないと音が響きやすい、反響の多い家になりやすくなります。つまり、外から出る音に対しては防音性が高いのに、家の中で発生した音が響きやすくなるということです。反響音が大きいということは、もちろん煩いと感じることになるでしょう。では、全く反響がない部屋はどうなるのかというと、実は究極的には無音になります。反響が連続して起こることを残響というのですが、無響室では残響時間、つまりは音が聞こえている時間がほぼゼロになります。スピーカーなど音源があるとしたら、すぐに音が聞こえない程度に減退してしまうので、スピーカーのすぐそばに耳を近づけていなければ音が聞こえず、スピーカーに近づけた耳からは音が聞こえても、反対側までの耳には音が届かない、なんてことが起こります。このぐらいになると、自分の呼吸音や、血液の流れる音など、自分が音の発信源となる小さな音がかなり大きく聞こえるようになります。音波というのは、結局は刺激です。常日頃音の大小に差はあれど、様々な音に囲まれている私達は、感覚が遮断されたことによって精神に以上をきたすそうです。正常な聴覚を持った人が、45分以上無音の空間にいると、強いストレスがかかりおかしくなってしまうそうですよ。ちょっと恐いですね。居心地良く暮らすためには、室内で発生した音を、やわらかく跳ね返してくれるくらいの音が一番良いそうです。昔から使われてきた木材などは、人間にとって心地よい音になります。外から入ってくる音を遮音と吸音で減らすだけでは、完全な防音ではないのです。

Copyright© 防音研究 All Rights Reserved.